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応援メッセージ(上村大様)

 株式会社トミーウォーカー代表取締役 上村大様からの応援メッセージです。
 本サイト管理人も理解しきれていなかった遊び方、日本のTRPG史内の位置付けなどに触れられています。
 ありがとうございます!

 パールシードは、「TRPGの初心者にゲームマスターをやらせる事」を自らに使命付けた、それだけで当時はとてつもなく斬新な(そして、今でもかなり斬新な)ルールブックです。箱の絵や文章を読んで冒険の世界に憧れた人や、パールシードを家族や友達からプレゼントして貰った人……そうしたTRPGにこれまで関係無かった人に対して、「ゲームマスターをやれ」と、ルールブックに書いてあるのです。
 そして、パールシードは、GMに挑戦する初心者を見捨てません。それは段階的に進む読みやすいルールブックの構成に留まらず、根本のゲームシステムまでもが、全て初心者GMの為に作られているのです。

 パールシードのゲームシステムは、おそらく、「TRPGの面白い要素」をとにかく全てピックアップした上で、「無くてもGMは困らないもの」を片っ端から削ぎ落とす、という工程でデザインされているように見えます。
 削ぎ落とされた要素は「キャラクターメイキング」と「成長の選択要素」です。その代わり、「沢山のイベント」「キャンペーンシナリオ」「GMの役割」が重視されています。これによりパールシードは、「PCに奉仕するGM」でも「PCを支配するGM」でもない、「PCと一緒に物語を作っていくGM」という、通常、TRPGにおいて「正解」とされる遊び方に、自然と初心者GMを導く作りになっているのです(さらに驚く事に、ルールブックをちゃんと読まず、ナナメ読みの状態で始めても、自然にその状態に導かれます。これは初心者向けゲームにとって、非常に大切な事です!)

 パールシードは、それなりの密度があるシナリオを、かなりの短時間で遊ぶ事ができます。だから僕としては、休日にお友達と集まって、全5本の冒険キャンペーンシナリオ「聖珠伝説」に挑戦することを、初心者の方にもお勧めします。たぶん、5〜6時間あれば終わるはずです。
 やはりパールシードは、キャンペーンの中でこそ輝くシステムです。シナリオ中では、本文にちっとも書かれていない出来事が次々と起こります。何しろ1レベルのキャラクター達ときたら、装備してる剣が重くて倒れるわ、戦いが嫌になって逃げ出すわ、それはもう散々なのです。初心者プレイヤーさんがいたら、英雄物語を期待して始めたのに、不甲斐ないPCに本気で嫌悪し、怒り始め、いや〜な気分になることもあるでしょう。
 ところが、キャラクターが成長するとその気分は一変します!
 レベルが上昇するたびに、武器を扱えなかった戦士は徐々に熟練の技を開花し、戦いが嫌で逃げてばかりいた魔法使いは、徐々に己の役割を自覚してゆくのです!
 村のちょっとした用事を解決していたダメダメなPC達は、僅か数時間後には、パールシードを奪い世界を支配せんとするデーモンコマンダーの前に、人類最強の勇者として立ちはだかるのです。この濃密な数時間を終えた時、最初の弱いPC達にイライラした記憶は、皆の中で既に「良い思い出」となっている事でしょう。もちろん、他のTRPGシステムでも同様の達成感は得られます。ですがパールシードならば、本来ならば数ヶ月〜数年掛けなければ到達できない「上級者の為のご褒美」を、初心者GMとPC達が、僅か数時間で、この醍醐味を味わうことができるのです。初期レベルのイライラは、その「思い出」を生み出す為の伏線だったのです。
 ほんの数時間で、あなたはずっと忘れることのできない、「もうひとつの人生」を体験する事ができます。パールシードは紛れもない名作です。ぜひ一度、プレイしてみてください。

 ……そうそう、2013年の最新環境に適応したTRPG熟練者の皆さんなら、このゲームが歴史上においてどのような位置づけにあるのか、すぐお分かりになるでしょう。
 この作品は、「迷宮キングダム」や「サイコロ・フィクション」へと続く冒険企画局の王道であると同時に、<コンバットマトリクス>は、当時もいくつかの作品で試みが始まっていた「ハンドアウト」の、原型のひとつなのです。つまり、2013年のTRPG熟練者ならば、一度パールシードを遊び終わったら、コンバットマトリクスの自作ぐらいは楽勝って事です。
 例えば低レベル時のコンバットマトリクスの2番に
「●●の危機を見て、思わず体が動き、かばってしまった! 自分のHPは2減ったが、相手は無事なようだ……(●●は、この結果を出した時にPCの中から選ぶこと)」
なんて項目を入れておき、高レベル時のマトリクスや、冒険で得られる魔法の武器に
「●●への思いを乗せて斬撃! 6ダメージ」
なんて入れておけば、自然とそういうセッションになることでしょう。せっかく復刻されたので、皆さんのそういう「最新パールシード」も、見てみたいです。

2013/8/6 上村大(トミーウォーカー)

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